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  • 執筆者の写真松本 花音

地元広島で目撃したG7サミット 沿道に手を振るトルドー加首相

 2023年5月19日正午、筆者は、広島市中区中島町の「吉島通り」の歩道上にいた。


 主要国G7の首脳がそのとき集まっているはずの平和記念公園の南端から南に100メートルほど。一般人として首脳らに最も近づくことのできるのがその場所であろうと、広島出身の筆者が見込んだのが、そこだった。

平和記念公園は平和大通り沿いに白いパネルで囲われたが、資料館の建物は見えた=2023年5月19日11時36分ごろ、広島県広島市中区中島町で、松本花音撮影
平和記念公園は平和大通り沿いに白いパネルで囲われたが、資料館の建物は見えた=2023年5月19日11時36分ごろ、広島県広島市中区中島町で、松本花音撮影

 平和大通りと平和記念公園の境目には、大通りに並行して高い2メートルほどの白いパネルが壁のように設けられ、それが100メートルを超えて続いている。このため、広島平和記念資料館の建物は見えるが、原爆死没者慰霊碑など公園内の地上の様子を見通すことはできない。慰霊碑の向こうには原爆ドームがあるが、それも、白いパネルに遮られて筆者のいる位置からは見えない。周りには地元紙「中国新聞」や地元テレビ局「RCC」、そして全国紙やNHKの記者たちがいる。


 午後零時20分ごろ、平和記念公園の南端の白いパネルの壁の一部の、蛇腹状になっている部分が開かれる。日本とアメリカの国旗をボンネットの両サイドに立てた車が2台、そこから出てくる。


 車列は平和大通りを横断して吉島通りに入ってくる。ゆっくりと筆者らの前を通り過ぎる。筆者が見る限りでは時速30キロほどではないかと思われる。


 近くの歩道上にいた男性が警察官に向かって「今、バイデンさんじゃったのう」と話しかける。「岸田さんももう通ってん?」との質問に、警官は「ぼくらもここらへん警備してるだけなんでね。なんも言えんですね」と言う。筆者には、バイデン米大統領も岸田首相も見えていない。


 6分後の零時26分ごろ、国旗をつけない車が出てくる。筆者はカメラでの写真撮影に気持ちを集中してしまっており、だれがその車に乗っているかを確認することはできない。

青白赤の3色のフランス国旗をつけた車が続いて出てくる。マクロン大統領が乗っているのだろうと思われるが、車内は薄暗く判別できない。

手を振るカナダのトルドー首相=2023年5月19日零時30分ごろ、広島市中区中島町で、松本花音撮影
手を振るカナダのトルドー首相=2023年5月19日零時30分ごろ、広島市中区中島町で、松本花音撮影

 ただ一人、筆者が認識できた首脳の車があった。カナダのトルドー首相だ。零時30分ごろ、車中で沿道の人たちに手を振りながら通り過ぎていく。「手振ってる!」と声が上がる。トルドー首相は顔を車の窓ガラスに近づけているように見えた。だから筆者の目で認識することができたのだと思われる。

英国のスナク首相を乗せたと思われる車=2023年5月19日零時29分ごろ、広島県広島市中区中島町で、松本花音撮影
英国のスナク首相を乗せたと思われる車=2023年5月19日零時29分ごろ、広島県広島市中区中島町で、松本花音撮影

 それに続いて黒赤黄の3色のドイツ国旗をつけた車、そして、緑白赤の3色のイタリア国旗をつけた車がそれぞれ出てきた。ショルツ首相とメローニ首相がそれぞれ乗車していると思われるが、車内は薄暗く、判別できない。


 3分後、ユニオンジャックのイギリス国旗をつけた車と12の金色の星が円環状に配置されたEU連合の欧州旗をつけた車が出てくる。車の中は暗く、だれが乗っているのかは見えない。


 原爆死没者慰霊碑の前にG7首脳が勢ぞろい


 この日、2023年5月19日の昼前、主要7カ国首脳会議(G7サミット)のメンバーが平和記念公園で一堂に会した。


 中国新聞がインターネット上に設けた「広島サミット2023」のページにあるタイムラインによれば、アメリカのバイデン大統領がほかの首脳より遅れて最後に11時18分に平和記念公園に到着し、全首脳が原爆資料館にそろった。同紙の記事によれば、米軍の最高指揮官として核攻撃を指令する際の通信機器が入ったとみられる黒いかばんも、随行者によって資料館に持ち込まれた。

原爆死没者慰霊碑(広島平和都市記念碑)の前に並んだG7首脳たち=2023年5月19日午後零時6分、広島市中区中島町(サミットのウェブサイト<https://www.g7japan-photo.go.jp/images/55>に掲載された著作権フリーの画像「KN2_0286」)
原爆死没者慰霊碑(広島平和都市記念碑)の前に並んだG7首脳たち=2023年5月19日午後零時6分、広島市中区中島町(サミットのウェブサイト<https://www.g7japan-photo.go.jp/images/55>に掲載された著作権フリーの画像「KN2_0286」)

 中国新聞のタイムラインによれば、首脳たちは、原爆資料館の視察を終えた後、正午過ぎ、原爆慰霊碑に献花した。そのあと、首脳らは、サミット会場となる広島市南区元宇品町のグランドプリンスホテル広島に移動した。筆者が目撃したのはこの移動の際の車列だとみられる。


 G7首脳の車列を目の前にワクワク


 【筆者の視点】首脳たちの車列を間近に見て、私は、ワクワクした。


 サミットを機に核保有国であるアメリカ、イギリス、フランスを含むG7の大統領や首相が平和記念公園を訪れたのは、異例の出来事であり、喜ばしいことだと思う。中国新聞がサミット閉幕直後の5月23、24日に国内外の計200人にアンケートしたところ、回答者の9割強がG7サミットの成果を肯定的に評価した。核軍縮につながるとの見方も7割弱に達した(中国新聞デジタル、「サミットを9割が評価 一方で核兵器「なくせない」が半数 広島で200人に街頭アンケート」、2023年5月24日)。

警備にあたる大阪府警の警察官たち=2023年5月19日11時40分ごろ、広島県広島市中区中島町で、松本花音撮影
警備にあたる大阪府警の警察官たち=2023年5月19日11時40分ごろ、広島県広島市中区中島町で、松本花音撮影

 もっとも深く印象に残ったのは、警備体制の厳重さだ。三重県警や和歌山県警、福岡県警など今まで見たことのない県の警察官が広島に大集合して警備にあたっていた。広島の土地勘は無く、自分の担当場所を警備しているだけの様子だったが、それでも無事、G7サミットを完遂することができた。私としては、各首脳が原爆資料館を見て回っているところや献花したり植樹したりしているところを生で見たかったとは思うが、厳重な警備体制の中で各首脳の車列を見ることができただけでも、貴重な経験だった。


 米国のバイデン大統領が核のボタンを平和記念公園に持ち込んだことには、私は異議を申し述べたい。核廃絶を謳う岸田首相だが、核兵器禁止条約の会議への参加を拒んでいる。朝日新聞デジタルに掲載れた記事によれば、被爆者からも「広島を利用された」との批判の声が出ている。


 8月に入り、平和や戦争についての報道が増え、考える機会も増えてくるだろう。G7サミットを機に「核兵器のない世界へ」の舵を岸田首相にはとってもらいたい。

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