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  • 執筆者の写真滝川乃彩

過半数がダイエット情報ネット検索で専門家に衝撃「足を踏み外さないで」

 アンケートに答えた女子大学生のうち、SNSなどインターネットでダイエットに関する情報を自ら検索することがよくあるという人が16%、時々あるという人が52%を占めたことについて、跡見学園女子大学で心理学部特任教授を務める鈴木眞理医師は「半分以上の人がダイエット情報を検索しており、衝撃的な結果だ」「SNSによって影響を受けている部分は大きい」と指摘し、「足を踏み外して、病気にならないでほしい」と話した。


 鈴木医師が理事長を務める一般社団法人日本摂食障害協会が摂食障害当事者やその家族を主な対象に2022年に行ったアンケートでは、「インターネットやSNSを使って情報収集しますか?」という質問に対し、8割程度が調べると答えた。「調べた情報を参考にして、実際に自分で試してみたり、行動に移したりしたことはありますか?」という質問には、「ある」という回答が7割余だった。


 鈴木医師は、上智大学での取材班のアンケートの結果を「とても興味深い」と評価し、同協会のアンケートの結果と比べて、「病院に通っていない、一見健康に暮らしているような学生に対するアンケート結果と、食に問題を抱えている患者さんに対するアンケート結果が似ているということは大きな問題」と語った。上智大学でのアンケートでは、「SNSやインターネットで流れる情報がきっかけで、ダイエットをしたことはありますか?」との質問に、回答した女子学生の65%が「ある」と答えた。


 鈴木医師によると、摂食障害患者は、自ら始めたダイエットで発症し、リバウンドすることなく、異常な低体重になる。これに対し、健康な人は、無理なダイエットで、いったんやせても、リバウンドし、もとの体重に戻る。リバウンドは悪いことではなく、脳が安全弁として働いて体重をもとに戻そうとする健康で生理的な反応だという。このような違いがあるものの、健康そうに見える人のなかに「摂食障害予備軍」が含まれている可能性はある。

摂食障害について語る鈴木眞理医師=2023年4月11日、Zoomで

 少なくない数の女子学生が、韓国の女性アイドルが取り組んだとSNSで紹介されているダイエット方法に沿って、たんぱく質とサツマイモ、水だけに食事を制限している実情について、鈴木医師は、「いくらリンゴ、レモン、サツマイモを入れたとしても、栄養素を全部カバーできず、これはすごく危険なダイエットなんです」と指摘した。脳の主なエネルギー源であるブドウ糖が不足することになる。また、ブドウ糖の原料である炭水化物を制限して他の食品でエネルギーを確保するためには、たんぱく質や脂質で補わざるを得ない。純粋なたんぱく質はプロテインくらいで、たんぱく質に富む食品は必ず脂質も含んでいるので、動脈硬化が進んで、死亡率が高いことがすでに明らかにされている。「長く続けたら身体を壊す」という。

 複数の学生がSNSなどネットで情報を入手して実際に取り組んでいるダイエットの方法として挙げた「IUダイエット」や「16時間断食」について、鈴木医師は「全員にお勧めできるものは一つもない」と述べる。「必要な栄養素を欠けずに得られるような普通の食事と適切な運動、これ以外に正しいダイエットはない」という。


 では、女子学生がインターネットやSNSで見かける芸能人やインフルエンサーはなぜずっと細いままなのだろうか。鈴木理事長はこう続ける。


 「高収入を得ている有名タレントやK-POPのアイドルは、写真の撮り方もあるのかもしれないけど、体型の矯正や維持のために専門家チームを擁し、かなりのお金をかけてチームで美を追求している。美容整形手術や写真修整をしている可能性もあります。それに惑わされてはいけない」


 15歳~29歳の女性442人を対象に2020年に聞いたところ、自分の写真をSNSにアップする際、加工写真を使用することがあるという人が84%に上ったとの調査結果もある[1]


 フランスでは、広告に掲載される商業用のモデルの写真のうち、身体を細くするなどの画像処理を施したものには、「加工された写真」との表示を付さなければならず、これに違反すると処罰の対象となるという[2][3]。日本では現在、その必要がないため、SNSやインターネットに投稿された加工写真が現実であると認識される可能性がある。


 取材班の取り組みについて、鈴木医師は「今どきの有意義な調査であり、20歳代の当事者 によって行われていることにも意味がある」と評価した。



[1] (株)マンダム、「8割以上の女性が自分の加工写真をSNSに使用! 女性のSNS用の写真に関する調査②」『PR TIMES』2020年4月1日 (https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000579.000006496.html [2] 岩本麻奈「フランスの『加工写真』告知義務は、是か非か」『東洋経済オンライン』2017年10月22日(https://toyokeizai.net/articles/-/193880?page=2 [3] https://www.legifrance.gouv.fr/jorf/id/JORFTEXT000034580217

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