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執筆者の写真奥山 俊宏

国会図書館保存の東京五輪組織委サイト「館内限定公開」、最後の姿は保存できず

 昨年6月末に解散した公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(事務所=東京都新宿区西新宿2丁目、会長=橋本聖子参院議員、事務総長=武藤敏郎・元財務事務次官)の公式ウェブサイトについて、国立国会図書館の「インターネット資料収集保存事業(WARP)」による保存が昨年春に途絶え、その結果、昨年6月30日夜に閉鎖される直前の最後の姿の同館による保存は見送られた。保存済みのデータはかつて広く一般に公開されていたが、一昨年暮れから非公開となった。こうした経緯は、上智大学文学部新聞学科の学生を含む取材班による報道で昨年6月末に明らかにされ、その後の昨年8月から保存済みのデータは「国会図書館内での限定公開」となった。



東京2020大会組織委員会の公式ウェブサイトの閉鎖直前の姿=2022年6月30日
東京2020大会組織委員会の公式ウェブサイトの閉鎖直前の姿=2022年6月30日

 組織委の公式サイトについて、国立国会図書館は2015年9月に収集と保存を始め、以後、2022年3月22日までの7年半の間に合計29回にわたって、そのときどきのサイトのデータを図書館側のサーバーに保存してきた。国会図書館は当初、WARPのウェブサイトで、それらの過去のサイトをそのままの姿で公開していたが、大会終了後の2021年暮れごろに公開を停止した。収集・保存も2022年3月より後は途切れた。


 国立国会図書館法の規定に基づき同図書館は国や自治体など公的機関のウェブサイトを許諾なしで保存・公開する権限を持つが、組織委は民間団体の扱いでその対象外。組織委や国際オリンピック委員会(IOC)などの許諾がなければ、公開も保存もできず、それが停止の理由だった。


東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の公式サイトを「館内限定公開」とした国立国会図書館WARPのサイト
東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の公式サイトを「館内限定公開」とした国立国会図書館WARPのサイト

 国立国会図書館関西館の電子図書館課の担当者の取材に対する説明によれば、同館は組織委の公式ウェブサイトの閉鎖前の収集を要望したが、3月時点のウェブサイトまでしか許諾が得られなかった。このため、昨年6月時点のサイトについては、収集・保存をできなかった。当時、日本オリンピック委員会(JOC)との間で新規契約の調整中だったが、その後、合意が成立し、収集したウェブサイトの利用提供に係る契約が結ばれた。これによって昨年8月12日から、国立国会図書館の館内限定で公開できるようになった

https://warp.da.ndl.go.jp/waid/23301)。国会図書館の担当者は「これ以上の詳細は、契約の具体的内容に係るものであることから、お答えすることができません」と答えた。


 取材のための問い合わせに対するJOCの「レガシー」担当の返答によれば、組織委のウェブサイトの収集・保存・活用については、主に当時の組織委員会と国会図書館で検討された後、国際オリンピック委員会(IOC)の許諾を受けて行われている。その合意の内容について、JOCや国会図書館はIOCと「守秘誓約」を結んでいるため、回答することができない状況だという。


 国立国会図書館において昨年6月末の組織委員会解散の時点のウェブサイトを収集・保存できなかったことは、大会の「レガシー」(遺産)を後世に引き継ぐ観点からとても残念なことであったと思われると指摘し、JOCにコメントを求めたが、これについては返答がなかった。


 詳しい経緯は以下の記事で:藤澤直樹、奥山俊宏 (2022年6月30日) 「国立国会図書館による五輪組織委サイトの保存・公開ストップ、そのままきょう閉鎖へ」『論座 法と経済のジャーナル Asahi Judiciary』

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